歩く

あるきながらうたおう

全休符

また、歳を重ねることができたので久しぶりに文章を書いてみようと思います。 24歳。私がこの世に生まれ落ちてから、地球が太陽の周りを24回回ったということになっています。この数は、地球の歴史と比べて、あまりにも少ない。4600000000回、すでに地球は太…

謎のシャワー

過去に撮られた写真を見ていた。 いつ撮ったのか、どこで撮ったのかという記憶はほとんど残っていなかった。 まったくの、すこしつながっている別人が撮ったかのような写真であった。その時交際していた人の記憶がよみがえる。 あぁなんでおれはいまここにい…

やっと歩き始めることができそうだ

先日、小学校以来はじめて、そのとき好きだった人のことを好きだと認めることができた。中学校で付き合っていることをからかわれて、それがものすごく嫌だったから、「あんなやつ好きじゃない」なんて言ってしまった。それは自分の心に嘘をついたということ…

無題

別れのさっぱり感が好きだ。 じゃあな、とさっぱりと別れてまた一人になって一歩を踏み出す感じが好きだ。 初めて会った人と短時間を過ごして話をして気持ちよくなるのは簡単だ。 長い時間をすごすといらいらすることもある。 もう会えない人とはどうすれば…

森の中を指す道標

何が舌を喜ばすのだろう。何が耳を喜ばすのだろう。 美味しいものを食べた時、心地よい音を聴いた時、立ち向かう勇気のなかったものに立ち向かう気力が湧いてくる。 向かうべき場所を忘れてしまった時の心許なさ。忘れてしまっていることにすら気づいていな…

めがね

どんと突かれた時に眼鏡がずれて、視界の端に縁が見えて初めて眼鏡をしていることに気づく。 視界の端に一瞬だけ映ったレンズを通さない景色。なんだこれ、と思いつつ、あっと言うことができないままに、すぐまた眼鏡はもどってくる。 一瞬見た世界が忘れら…

体と世界とぼくときみ

部屋に横たわってたまにギターの弦を弾く。 少ししてからふと音がなっていることに気づく。 そんなようにして、あるということに気づく。 いつかわかるかと思ってたけどこりゃ一生わかんないのかもしれないな。 あぁ、意識を持った原子になりたい。

Quaking heart

生は震えだ。 淡い存在を胸に抱く。 彼は震えながら吠えている。 震える足で野を踏んでいく。 雨水をのむことを危惧した自分の愚かさよ。 古くなるということの尊さよ。 ぬくもりの外に出ないとわからない輝きもあるということ。 厳しい世界だからこその輝き…

時を味わう

時間には味がある。 と思って、ちゃりんこをこぎながら、道行く人の時間の味を想像してみた。 茶髪で軽そうな(何が軽いのだかはよくわからないけれどなんだか軽そうな)大学生。 彼の時間はきっとスカートの味だ。 薄くて軽い、向こう側が透けるような、柄…

物語をつなぐ。

アウシュヴィッツ=ビルケナウに行った。 たくさんの人々がここで死んだという話を聞かされる。服を脱がされて髪を剃られて身ぐるみをはがされたのだという話を聞かされる。人々の髪は生地を作るのに使われたのだという。人々の肌には番号が刺青されたのだと…

たぶん、歩いていくしかない

葉っぱみたいだ。ひらひらと舞う葉っぱみたいだ。 地図も持たず、携帯も持たず、ただ知らない土地を歩き続けているとき、 目的地なんてなくて、どこにいるかなんてどうでもいいとき、 自分はただ風に揺られて、運ばれるところに運ばれていく葉っぱみたいだと…

まだ、生きている

火を眺めていたり、海を眺めていたり、ぶたを眺めていたりするとゆうに2時間は過ぎる。 農園での作業を終えて、長靴を履いたまま、手は土だらけのまま、自転車にまたがる。小さなラジオのダイヤルを回して曲を探す。 木にかこまれた坂を両手放しで下って、牧…

からだ総動員の歓声

右手に豆ができた。たぶん小学校の鉄棒以来だ。 軟弱な手だ。日々働いているひとはすごい。 しかし、豆ができたというちっぽけな事実がなんだか嬉しかった。 手の細胞たちが傷ついて、勝手に豆を作って、勝手に癒えていく。そんな事実がなんだか嬉しい。 「…

遺言

7月22日に帰ります。 まだ先だけど、それまでは農家で働こう。 帰国日は母の誕生日。 母の影響はとても大きい。 誰が来ても笑顔で受け入れ、食事を出す。中学のときひよこを連れて帰って、これから飼って鶏にすると宣言しても、「かわいいね〜」と受け入れる…